なぜHSPはすぐに「ぼーっと」する?脳が疲れる理由と回復のヒント

しょう
こんにちは、精神科医しょうです。
突然ですが、こんな悩みはありますか?

「気づいたら何も考えずにぼーっとしている」

「人の話を聞いている途中なのに、頭が真っ白になってしまう」

「やることはわかっているのに、体も心も動かない」

もしこんな経験が多いなら、あなたはHSP(Highly Sensitive Person)の特性による影響を受けているのかもしれません。

HSPさんは人よりも多くの情報や刺激を処理するため、脳が休息を求めて“思考停止”する瞬間がよくあります。

でも安心してください。

「ぼーっとする」のは怠けや不調ではなく、あなたの脳がオーバーワークから回復しようとしているサインなんです。

そこで本日は、HSPさんがぼーっとする理由や回復のヒントにお伝えしていきます。

本日の記事でわかること
・HSPがなぜぼーっとしやすいのかの理由
・病気ではなく脳の防御反応であること
・日常でできる回復&集中の工夫

「私ってダメ?」が「これでいいんだ」に変わるヒントを、一緒に見つけましょう。

しょう
この記事の信頼性
精神科専門医・指導医で、SNS総フォロワー10万人以上の精神科医しょうが書きます。

HSPの基本知識を知りたい方はこちら>

HSPがぼーっとしやすい3つの理由

HSPが「気づくとぼーっとしている」のは、意志の弱さや怠けではありません。

そこには、HSPならではの脳の働きが深く関係しています。

ここでは3つの理由を、日常の例とともに解説します。

1. 情報処理のしすぎで脳がオーバーヒートする

HSPはDOES(深く処理する特性)を持ち、日常の出来事も徹底的に考え、分析します。

会話ひとつとっても、「あの人の言い方、少し怒っていた?」「あの沈黙は意味があったのかも」と多層的に情報を読み取ります。

さらに「次はどう動けばいい?」「あの時の自分の対応は正しかった?」と、過去・未来のシナリオまで脳内で再生。

こうして五感+記憶+想像のフル稼働で情報を処理し続ける脳は、まるで常に高性能パソコンがフル回転している状態。

やがてシステムが過熱し、“一時的なスリープモード”=ぼーっとすることで脳を守るのです。

「そうか、私の脳は怠けていたんじゃなく、処理しすぎて自動で休憩していたんだ」──この仕組みを知るだけで、自分を責める気持ちが少し軽くなるはずです。

2. 刺激過多から脳を守る防御反応

明るい照明、騒がしい会話、混雑した電車。

「ちょっと疲れたな」では済まない刺激が、HSPにとっては雪崩のように押し寄せてきます。

脳は「これ以上は処理できない」と判断すると、自律神経が反応し、外界への意識を遮断して“強制的なシャットダウン=ぼーっと”を起こします。

つまりこれは脳の防御反応。

そのまま情報を受け取り続ければ、HSPの脳はオーバーヒートしてしまいます。

「何もできない自分」ではなく、「自分を守るために休んでいる脳」と捉えてみてください。

っと見方が変わるはずです。

3. 共感と予測思考によるエネルギー切れ

HSPは、人の気持ちや場の空気をまるで自分のことのように感じ取ります。

職場で同僚が苛立っていれば心がざわつき、友人の落ち込みを見れば一緒に沈んでしまう。

さらに、「もしこうなったらどうしよう」「こう言ったらどう思われる?」と、未来の展開を予測し続けます。

この“共感+未来シミュレーション”は、ものすごい心理的エネルギーを消耗します。

気づいたときにはもうバッテリーが切れていて、脳と心が強制的に休息モード=ぼーっとしてしまうのです。

「だから私は急に動けなくなるのか」──こう理解できると、ぼーっとする時間を責めるのではなく、「必要なリカバリータイム」として大切にできるようになります。

つまり、HSPの「ぼーっとする」は怠けでも弱さでもなく、脳があなたを守るために働いているサインなのです。

ぼーっとするのは病気?それともHSP特性?

「私って病気なのかな?」と不安になる方も多いかもしれません。

先ほどお話した通り、HSPがぼーっとするのは病気ではなく、脳が過剰な刺激や情報処理から回復しようとする自然な反応です。

しかし、HSP気質からくるものではなく、病気が隠れている場合もあるので、解説しておきます。

病気の可能性がある場合は?

もし「物忘れが増えている」「何をしていても意識が飛ぶ」「生活に支障が出ている」という場合は、うつ病・注意欠如症(ADHD)・自律神経の不調など精神的な不調が隠れていることもあります。

気になる場合は、早めに心療内科や精神科に相談すると安心です。

また、これらの精神疾患以外にも身体的な不調でぼーっとしてしまう場合もあります。

今までのぼーっとすることは少なかったにも関わらず最近になり、そうなることが増えたのであればむしろ先に身体的な不調を先に疑った方が良いです。

まずは、身体面を精査して大きな問題がないことを知ってから、精神的な要因を検討したいところです。

HSPが「ぼーっと」とうまく付き合うための工夫

HSPの「ぼーっとする」は、脳が過剰な情報処理や刺激から回復するための大切な時間です。

ここでは、日常でできる1つのシンプルで効果的な方法を紹介します。

「意識的にぼーっとする時間」を予定に組み込む

HSPは無意識のうちに脳が処理しすぎてしまうため、ふとしたときに動けなくなるような“強制シャットダウン”が起こります。

そこでおすすめなのが、あらかじめ意識的に「ぼーっとする時間」を取ることです。

やり方はとてもシンプルです。

・1日3回、2〜3分だけ「何もしない」時間をスケジュールに入れる。
・座って目を閉じ、呼吸の音だけに意識を向ける──それだけでOKです。

スマホや音楽も一切使わず、脳を完全にオフラインにする感覚です。

これを「マイクロ瞑想」と呼ぶ人もいますが、難しい瞑想法ではありません。

ポイントは“考えないことを頑張らない”こと。

浮かんできた思考は流れる雲のように眺めるだけで大丈夫です。

こうした短時間の意識的な休息を日常に組み込むだけで、脳が過剰稼働でオーバーヒートする前にクールダウンでき、無意識な“強制ぼーっと”が減っていきます。

「ぼーっとする時間は悪いこと」ではなく、「必要な回復の時間」として予定に入れる。

この意識だけでも、あなたの1日の疲れ方は大きく変わります。

まとめ

HSPが「ぼーっとする」のは、集中力がないからでも怠けているからでもありません。

深い情報処理・過剰な刺激・強い共感力という特性で疲れ切った脳と神経が、自分を守るために休んでいるサインです。

大切なのは、「ぼーっとするのは悪いことではない」と認識すること。

そして、あらかじめ意識的な休息時間をスケジュールに組み込むことで、強制的な“シャットダウン”を防ぎ、生活の質を整えられます。

「私ってダメだ」ではなく、「私の脳は今回復しているんだ」。

そう思えるだけで、少し心が軽くなるはずです。