このチャプターでは、自己肯定感について総論的な内容について解説していきます。
自己肯定感とは、これまでも様々な捉え方が示されてきました。
文部科学省「自己肯定感を高め、自らの手で未来を切り拓く子供を育む教育の実現に向けた、学校、家庭、地域の教育力の向上(第十次提言)」によれば、以下の2つの側面から捉えることが考えられるとしています。
学校生活における勉強やスポーツ等において、相手と競い合う気持ちや相手に負けたくないという気持ちを持って挑戦することは大切であり、その中で成功や失敗を繰り返し、ある種のたくましさを身に付けることは、長い人生を送る上で糧となると考えられます。
また、他者からの指摘により、自分が認識していなかった部分を知ることも、成長する上で大切なことです。
具体例として私事で恐縮ですが、小学生の時、徒競走が結構早かった方なんです。それで運動会のたびに活躍しちゃうと達成感を得られていました。
その後、学年が上がるにつれて、私の足の速さも大したことがなかったことを自覚するようになります笑
でも誰かに負けたくないという気持ちは確かに、自分自身を支えていた記憶がありました。
他者との比較や他者からの評価などを意識するあまり、自分の良いところが見えなくなったり、自分に自信が持てない部分、嫌いな部分を過度に意識してしまったりすることによって、何事かに挑戦する姿勢や積極的に自らの意見を表明する態度を失うことのないようにすることも必要です。
上記2つの側面から捉えること、それが自己肯定感を考える際には重要と言えるでしょう。
自己肯定感の本質
自己肯定感とは、単に自分を「良い」と思うことではありません。
先述したように、勉強やスポーツ等を通じて他者と競い合うなど、自らの力の向上に向けて努力することで得られる達成感や他者からの評価等を通じて育まれる自己肯定感、もちろんこれも大切です。
しかし、みなさんにとって大切なことは、もう1つの自己肯定感と言えるでしょう。
自らのアイデンティティに目を向け、自分の長所のみならず短所を含めた自分らしさや個性を冷静に受け止めることで身に付けられる自己肯定感のことです。
自分自身をありのままに受け入れ、自分の価値を認識する能力が必要と言えるでしょう。
完璧でなくても、欠点があっても、そのままの自分を大切に思える心の状態です。
自己肯定感が高い人は、以下のような特徴を持っています。
- 自分の長所と短所を客観的に理解している
- 失敗を恐れず、新しいことに挑戦できる
- 他人の評価に過度に左右されない
- 自分の意見や感情を適切に表現できる
- 他者を受け入れ、良好な人間関係を築くことができる
自己肯定感は、自分自身との健全な関係性を築くための基盤となります。
それは、自分の価値を外部の基準や他者の評価のみに依存するのではなく、内面から湧き出る自己価値感を育むことを意味します。
また、自己肯定感の高い人は、自分の長所を活かしつつ、短所も受け入れることができます。
これは、自己改善への意欲を失うことではなく、むしろ現実的な自己認識に基づいて成長を続けられることを指すのです。
自己肯定感は固定的なものではありません。
人生経験や環境の変化、自己への理解の深まりによって、常に変化し成長する可能性を持っていることを忘れてはなりません。
自己肯定感の重要性
自己肯定感は、私たちの人生の質に大きな影響を与えます。
以下のような面で、自己肯定感の高さが重要となります。
・メンタルヘルス
自己肯定感が高い人は、ストレスや不安、抑うつなどのメンタルヘルスの問題に対して強い耐性を持ちます。
自分自身を価値ある存在として認識することで、困難な状況にも前向きに対処できる力が育まれます。
・人間関係
自分を受け入れることができる人は、他者も受け入れやすくなります。
これは良好な人間関係の構築につながります。
自己肯定感の高さは、他者とのコミュニケーションにおいても、自信を持って自己表現することを可能にし、より深い関係性を築く基盤となります。
・目標達成
自己肯定感が高い人は、自分の能力を信じて目標に向かって努力し続けることができます。
失敗を恐れずに挑戦し、たとえ思うような結果が得られなくても、それを学びの機会として前向きに捉えることができます。
・創造性
自分の考えや感情を大切にすることで、より創造的な思考や表現が可能になります。
自己肯定感の高さは、既存の枠にとらわれない自由な発想を促し、革新的なアイデアを生み出す源泉となります。
・レジリエンス
困難や失敗に直面しても、それを乗り越える力(レジリエンス)が高まります。
自己肯定感の高い人は、逆境を一時的なものと捉え、そこから立ち直る力を持っています。
これは、長期的な人生の満足度や成功に大きく寄与します。
・自己実現
自己肯定感は、自分の潜在能力を最大限に発揮し、真の自己を実現するための重要な要素です。
自分自身を信じ、価値ある存在として認識することで、自分らしい人生の選択や自己実現への道を歩むことができます。
・社会的貢献
自己肯定感の高い人は、自分の価値を認識しているため、他者や社会に対しても積極的に貢献しようとする姿勢を持ちます。
これは、個人の成長だけでなく、社会全体の発展にもつながる重要な要素です。
・学習と成長
自己肯定感は、新しい知識やスキルを習得する際の基盤となります。
失敗を恐れずに挑戦し、そこから学ぶ姿勢は、継続的な学習と成長を促進します。
・意思決定
自己肯定感の高さは、自分の判断を信頼し、主体的に意思決定を行う力を養います。
これは、人生の重要な岐路に立たされた時、特に重要となります。
・全体的な生活の質
自己肯定感は、仕事、家庭、趣味など、生活のあらゆる面での満足度に影響を与えます。
自分自身を肯定的に捉えることで、日々の生活をより豊かに、意義深いものとして経験することができます。
まとめと今後の展望
自己肯定感は、私たちの人生の質を大きく左右する重要な心理的要素です。
この能力は、メンタルヘルスの維持から、人間関係の構築、目標達成、創造性の発揮、そしてレジリエンスの強化まで、多岐にわたる影響を私たちの人生に与えます。
自己肯定感を理解し、育むことは、より充実した人生を送るための重要な鍵となります。
それは、自己理解を深め、小さな成功体験を積み重ね、自己と向き合う勇気を持ち続けることで、徐々に育まれていくものです。
今後さらに自己肯定感について詳しく学んでいきましょう。
次回は、自己肯定感をセルフチェックする方法について解説します。
自分自身の自己肯定感のレベルを知ることは、自己理解を深め、成長の方向性を見出す上で非常に重要です。
自己肯定感という複雑で奥深いテーマについて、共に学び成長していきましょう!
しょうこんにちは、精神科医しょうです。このチャプターでは、自己肯定感のセルフチェックについて解説していきます。突然ですがあなたは、自己肯定感の高さを診断(セルフチェック)したことはありますか?自己肯定感とは、[…]