【心の迷宮】フロイトの防衛機制が織りなす世界とは?

こんにちは、精神科医しょうです。

突然ですが、皆さんはジークムント・フロイトという人物をご存知でしょうか?

精神医学や心理学などにご興味がある方は、ご存知の方も多いかもしれませんね。

フロイトは、精神分析学の創始者です。

神経症の研究や無意識の研究などを行いました。

そんなフロイトですが、人間の心には、「エス(イド)」「超自我」「自我」の3つの領域があるというパーソナリティ構造論を唱えました。

パーソナリティ構造論とは

  • 「エス(イド)」とは、簡単に言うと“欲望”
    →本能のままに快を求めて行動しようとし、欲求、感情、衝動などをそのまま実現しようとします。

 

  • 「超自我」とは、一言で言うなら“ルール”。
    →道徳的な部分です。善い行いをするように勧め、悪い行いはしないように働きかけます。

 

  • 「自我」とは、“調整役”。
    →言うなれば、中間管理職の働きがあります。上記「エス(イド)」や「超自我」からの要求、そして外界からの刺激を調整します。

上記3つの領域の働きを見ても分かるように、「自我」はとてもストレスフルな立場にあります。

下(エス(イド))からの突き上げ、上(超自我)からの命令、そして外界からの条件を考慮し、適切な行動を作り出さなければなりません。

自我の持つ特有の働き「防衛機制」

それゆえ、自我は「防衛機制」という自我を守る特有の働きを持っています。

しょう

防衛機制とは、現実をありのままに受け入れると自我が脅かされる可能性のある時に、不安を軽減しようとする無意識的な働きのことです。

現実を歪曲したり、無視や否定をすることで、自我の都合の良いように受け入れる機能のことを言います。

いくつか防衛機制をご紹介したいと思います。

 

【抑圧】

最も基本的な防衛機制で代表的なもの。

思い出したくない不快な感情や記憶、思考などを無意識に抑え込んで気付かないようにしたり、忘れてしまうこと。

自我を脅かす現実から目をそらす働き。

  • ・学生時代に嫌いだった相手の名前を思い出せない
  • ・乗り気ではなかった友人との遊びの予定を無意識にすっぽかしてしまう、など

 

【逃避】

ストレスや困難から心理的にも物理的にも逃れようとすること。

「現実」「病気」「空想」などへの逃避がある。

  • 現実への逃避→試験勉強をしなければならないのに、部屋の掃除や家具の配置替えなど、本来関係のない別の行動に没頭して気を紛らわそうとすること

 

  • 病気への逃避→病気を理由に逃れようとすること仮病とは異なり、実際に身体症状に現れる(会社に行こうとすると頭痛や腹痛、めまいがするなど)

 

  • 空想への逃避→空想の世界で現実には満たされない自己実現を試みること(芸能人や二次元のアイドルに恋をするなど)

 

【置き換え】

受け入れがたい感情や欲求を別の対象に向けること。分かりやすく言うなら「八つ当たり」

  • 上司に怒られた同僚が部下の些細な過失に対し過度の攻撃を向ける
  • 親子喧嘩をした時、イライラして物に当たる、など

 

【合理化】

受け入れがたい欲求や感情をもっともらしい理由を付けて自分を納得、正当化すること。

  • 高くて買えない高級車を「燃費が悪い」「車高が低すぎて実用性に欠ける」などと言って自分に言い聞かせる
  • 仕事のミスを「この日は寝不足で集中力に欠けていた」と言い聞かせる、など

 

【反動形成】

受け入れがたい感情や欲求など自分の本心を隠すために、本心とは真逆の行動や態度を取ること。

  • 嫌いな相手ほど丁寧な敬語で話したり、丁寧に対応する
  • 好きな相手のランドセルを隠す

 

【投影】

受け入れがたい自分の感情や欲求を他人のものであるかのように押し付けること。

  • 自分が嫌っているのに、相手が自分を嫌っていると思い込む
  • 同僚の笑い方が嫌いと感じているが、実は自分の笑い方が嫌いと感じている、など

防衛機制が生むデメリットも

このように防衛機制は、自我を守る働きがあります。

しかし、これら防衛機制を使うことによって、現実を自我の都合の良いように歪めて解釈してしまいます。

そして人には、得意な防衛反応があり、それらはパターン化されています。

無意識の働きでもあるため、自分では気づきづらいのも特徴です。

となると、自我が弱くて脆ければ脆いほど、現実を歪めて自分の都合の良いように受け取ってしまいます。

私達が見ている世界、認知している世界は、決して「ありのままの世界」とは言えないのです。

どこまでいっても、自我が認知している世界、自我にとって都合の良い世界と言えるでしょう。

大切なことは、その事実に自分が気付いているかどうかです。

  • 「他人の気持ちを分かったつもりにならない」
  • 「世界を分かったつもりにならない」

そんな意識が大切です。

どこまでいっても私達が生きているこの世界は、時に主観的であり、時に客観的と言える、主観と客観が入り混じった本人独自の世界なのです。

まとめ

私達が見ている世界は、決してありのままの世界とは言えません。

自我の防衛機制という無意識の働きがあるように、どこまでいっても世界は自我にとって都合の良い世界と言えます。

しかし、それが決して悪いということではありません。

防衛機制により、ストレスフルな状況に置かれている自我を守っているのですから、それは必要な働きです。

大切なことは、自我の防衛機制の働きを知り、世界が自分にとって都合よく解釈されていることがあることを自分自身が知っていることです。

私のブログのテーマは、「他人軸でなく自分軸で気楽に生きる」です。

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